◎この記事は5分ほどで読めちゃいます。
(写真の参照元:Каспийское море-Wiki Commons-)
カスピ海は海でしょうか?
それとも湖でしょうか?
どうでもいいですか?
いや、どうでもよくないんです。
国の将来を左右するかもしれない大事な話なのです!
カスピ海と言うからには「海」なのか。
それとも、陸に囲まれていることを考えると「湖」なのか。
大きさを考えてみると、日本列島と同じくらいの面積があります。
それだけ、大きいと「海」と言いたくなる気持ちも分かりますね。
カスピ海が「海」なのか「湖」なのかを巡って面白い争いが行われました。
本人たちにとっては多いに真剣なのですけど。
これを巡って争ったのは、アゼルバイジャン・ロシア・カザフスタン・トルクメニスタン・イランの5カ国です。
まずは、5つの国の位置を地図で見てみましょう。
どこにあるでしょうか?
こうです。
さっき見た地図とほとんど変わりませんね。
もはや、同じ地図です。
つまり、この5つの国はカスピ海をぐるりと取り囲んでいる国々ということです。
ロシアはグルジアの上にあります。
これで場所は分かりました。
それぞれの国が、カスピ海に接しています。
それでは、次です。
一番大事なのがこれ。
カスピ海では、石油と天然ガスの埋蔵が確認された、という事実です。
石油と天然ガスがあったらみんな欲しいですね。
これらの国々も例外ではなく、みんな欲しがります。
欲しがった挙げ句、どうなるでしょう?
戦争ですか?いいえ、起こりません。
ここで、さきほどの定義の話になるわけです。
「海」なのか「湖」なのか。
これが、どちらになるかによって、各国がどれだけカスピ海の支配ができるかが決まるのです。
さてさて。
もし、これが海だった場合はどうなるのでしょうか?
■「海」だった場合
国連海洋法条約を見てみましょう。
この条約によると、各国が支配できる海の事を領海と呼び、その範囲での経済的資源を管理する権利や義務を得る、とあります。
つまり、一定の線引きがされて、「あなたの国はこの部分の権利を持っています、そして、あなたはこっち・・・」というようにカスピ海を分割するということになります。
続いて、湖だった場合を見てみましょう!
■「湖」だった場合
湖だった場合は海とは正反対で、「湖に面している国々がみんなで管理しようね」となるわけです。つまり、周辺国での協同管理です。
2つの違いは「分割」なのか「協同管理」なのか、です。
最後の段落です。
今までのまとめとしては、カスピ海を「海」と呼ぶのか「湖」と呼ぶのか、の背景にあったのは、湖を「分割」するのか「協同管理」するのか、という違いです。
では、最後の質問です。
Q : 油田があなたのすぐ目の前に埋まっている場合、それを他の人々と協同で管理したいと思いますか?それとも自分で管理しますか?他の人々は、自分たちの周りに油田が見つからないので、あなたの目の前のものをみんなで管理しようじゃないかと持ちかけてきます。
A : 当然あなたは、この油田を自分で管理したいですはずです。
もう、ここまで来れば話が繋がりますね。
カスピ海の中でも、自国付近に油田が多く存在するような国は、分割を希望します。
それに対して、近くに油田などが見当たらない国は、カスピ海全体の協同管理を求めます。
さらに、まとめるとこういうことです。
■仮にカスピ海が分割された場合、自国に割り当てられる領海に、豊富な油田・天然ガス田があることになる国→「海」であると主張。
■仮にカスピ海が分割された場合、自国に割り当てられる領海に、油田・ガス田が無い、もしくはほとんど無いことになる国→「湖」であると主張。
「海」(分割したい・油田ある)派:ロシア・アゼルバイジャン・カザフスタン
「湖」(協同管理したい・油田ない)派:イラン
どちらとも表明しない:トルクメニスタン
※トルクメニスタンは、「永世中立国」を宣言しています。
出典は『コーカサス国際関係の十字路』です。