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贅沢とはほど遠い。
言ってしまえば、清潔感が無い。
手前でこちらを向いているのがオスマン(37)。
隣国から家族を残し、出稼ぎに来ている。
ただ写真で見せられたら、
そこに住みたいとは思わないだろう。
しかし、私は
「ここにもっと住んでいたい」と思った。
こんなに居心地のよい場所はそうそう無い。
コートジボワールから国境を越えて、リベリアへ入国。
その間も、何もわからない私を助け続けてくれたのがオスマン。
道中では、車のパンクなどのトラブルが相次いだ。
走行時間は4時間近くかかっただろう。
その間の休憩はたったの2回。
窮屈なタクシーで、負担のかかりきった体は、悲鳴を上げている。
リベリアの首都モンロビアに到着したときには日は暮れかかっていた。
心も体も疲れ果てた、私は、ホテルを探す力も残っていない。
その間もオスマンはいくつものホテルに値段を聞いて回ってくれた。
しかし、どこのホテルも尋常じゃない高額を吹っかけて来る。
「それじゃあ、うちに泊まっていくといい」
大通りから外れ、どんどん進むと、ついに入り口にたどり着いた。
それが家だとはわからない。
言われても家には見えない。
土の地面が剥き出しで、そこを、木で編んだ板が囲っている。
その囲いもちょっと手で押せば簡単に倒せそうだ。
囲いの中は鉄くずなどのゴミで一杯だ。
上にある写真には、机とイスが写っている。
そこで基本的な食事をとる。
地面にもゴミが溢れかえっている。
あっけにとられていると、
オスマンと一緒にここで住む友人が、
夕食をごちそうしてくれた。
今日の夕飯はマヨネーズ焼きそばだ。
市場で買って来てくれたのだろう。
アルミホイルに乗せられた焼きそばは、ほのかに温かい。
手でつまんで口に運ぶと、濃厚なソースの味が口のなか一杯に広がる。
具は何も入っていない。
私に遠慮していたのだろう。
そこにいた皆は言う。
「もう、お腹が一杯だ」と。
彼らは、私に一番いい場所を用意してくれた。
バネがむき出しになったベッドに薄いタオルをかける。
その上での睡眠では、背中にあたるカタいバネは全く気にならなかった。
オスマンたちは、この家を、鉄くずの集積所として解放している。
朝になると、住民がチラホラ、錆びきった鉄を持ってやってくる。
月に一回程、そのまとまった鉄くずは業者によって回収される。
そのときにいくらかのお金をもらえるらしい。
よく、アフリカで暮らす人を援助するこの是非が問われる。
ほんとに自立を促す事ができるのか?
そもそも、その考え自体が上から目線ではないのか、とも思う。
それに答えを出すことは難しい。
しかし、私は幸せだ。
個人的に、彼らに恩返しをする十分な理由ができた。