運動をした後に、幸福度が増加する。そう言われると、なんとなく、そんな気もする。たしかに、思いっきり運動をした後というのは、気持ちがいい。体の疲労が残っていても、それを上回るような喜びもある。この満足感や幸福感はどこから来るのか探ってみよう。
運動をすると、脳がストレスを感じる。心臓の鼓動が速くなるにつれて、脳は次のような思考をする。「自分は、今、何かと戦っている」もしくは、「何かから逃れようと必死になっている」。
このとき、自分自身や脳をストレスから守ろうとして、BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)というタンパク質が生成される。BDNFは記憶の保護と修復の効果を持っていて、記憶神経をリセットする役割を果たす。運動をした後に頭がすっきりしたり、思考がクリアーになるのも、納得出来る。
それと同時に、脳内では、ストレスと戦う物質としてエンドルフィンもつくられている。研究員McGovern氏によると、エンドルフィンは次のような役割を果たす。(参考:The Effects of Exercise on the Brain)
“エンドルフィンは、運動から来る不快感を最小限に抑えようとする。痛みの感覚を抑え、さらに、幸福感とも密接に関わっている。”
このように、運動をしている時、脳の中では様々な変化が起きていることになる。実際、座っている時と比べると、運動時の脳の活性化は著しい。図の左が「座っている時の脳の様子」で右が「20分ウォーキングした後の脳の様子」。
ここまでの内容をまとめると・・・運動時に分泌されるエンドルフィンとBDNFが、私たちの気分をよくし、幸福度を増加させているということになる。少し、恐ろしいことに、これらの物質は、依存性を持っている。ただ、私たちを幸せにするだけなのだから、麻薬よりはマシである。
運動時に、どのような仕組みで幸福度が増加するのか。その基本がわかったところで、今度はそれの最大化を考えてみよう。“どうやるのか”が、カギを握っている。
ペンシルベニア州立大学から興味深い実験報告(How Excercise Can Jog The Memory)が出されている。その結果というのが、【ある一日において、より効率的、より幸せになるためには、(もし、その日に運動をしなかったなら)定期的に運動をしているのかどうかは、さほど重要ではない】というもの。
“「一ヶ月間に渡って運動を続けたが、当日は運動をしていない人」は「同じ期間、全く運動をせず座ることを中心とした生活をした人」よりも、記憶力テストでよい成績を収めた。しかし、「当日の朝に運動をした人」ほどの結果は出さなかった。”
つまり、こういうことになる。
(1)「一ヶ月間に渡って運動を続けたが、当日は運動をしていない人」:まあよい
(2)「同じ期間、全く運動をせず座ることを中心とした生活をした人」:よくない
(3)「当日の朝に運動をした人」:よい
著名な作家であるGretchen Reynolds氏は、このテーマに関する、“The first 20 minutes”(最初の20分間)と題された本を書いている。(参考:The Surprising Shortcut to Better Health)
最も高いレベルの幸福度と健康への効果を手に入れるためには、プロのアスリートになる必要はない。日常の中で、幸福度と効率性を最高に高めるには、それより遥かに小さなことをやればよい。
“ずっと座ったままで居て、その後に行う20分間の運動こそが、最高の健康を生む。長生きで、病気にかかりにくい体—これは、動きだしの20分間でつくられる。”
となると・・・より幸福度を増大させるために、ハードな運動をする必要はないし、長時間する必要もないということになる。さらに、運動は習慣的に続けるのが効果的ということも言える。
結論:20分間の運動(軽いものでよい)に集中して、幸福度を増大させることを日課にする。
例えば、家から駅、駅から会社や学校などをウォーキングしてみるのも効果的かもしれない。
ウォーキングしてみようという方へ
source: buffer