アフリカの西部に位置するシエラレオネ。その中でも、今いるのは、ケネマという国。“ああ、泊まる場所が無い”。この感情から、一つの物語が始まる。私は基本的に、アフリカを旅する時には、宿を予約しない。インターネットに公告を出しているようなところは高すぎる場合が多い。今日も例外ではなく、宿を探して歩き回る。通行人にお勧めしてもらった宿にたどり着き、中に入る。昼間だというのに、建物の中は真っ暗。外の光が僅かに差し込むところに人の陰が見えた。店主らしき人。その人に、『3泊できるかどうか』と尋ねる。残念ながら、彼の答えはNo。どうやら、シエラレオネの大統領が、ここケネマにやってくるらしい。盛大なイベントが催され、それ見たさにやってきた人々が、安宿を一杯にしてしまっているとのこと。
店主の優しさで、近所にある宿を一緒に見て周ってくれることに。3つ渡り歩いたが、全て満室。んーーと考え込んでいると、店主がひと言『じゃあ、バイクで周ろうか。』次の瞬間には、どこからかバイクを引っ張り出してくる。『あれ、この人の宿はいいのか?』と思う間にも、私を乗せたバイクはものすごいスピードで走り続ける。途中、人を轢きそうになったが、それも気にならないくらいの、優しさ。5分走り、一件目。満室。10分走って、二件目。また満室。さらに10分走ってたどり着いた三件目の宿。空室!しかし、高い。さらに10分走る。四件目の宿。安くて、奇麗な最高の宿。
次の日の朝、ドアを叩く音が聞こえる。警戒しながらも開けると、ヘルメットを小脇に抱え微笑む、昨日の店主。『さあ、大統領に会いにいくぞ!』状況を把握しないまま、バイクに乗り、セレモニーの会場へ。軽装で飛び出したものの、そこまでの道のりは、20分ほどかかった。野菜の販売や最新農業技術の紹介イベントが広いさら地で展開されている。日が沈むまでに大統領は現れなかった。次の日も、次の日も、大統領はやって来ない。いつ聞いても、『明日来る』との返事が、誰からも返ってくる。大統領がいつやってくるかもよくわからないまま、ワクワク感を醸し出すケネマの人々。実際、店主が持つその気質があったからこそ、私は野宿しないで済んだ。ちなみに、彼には、7、8人の彼女がいるらしい・・・。